研究概要 |
以下の項目について検討した。 【二酸化チタンナノ粒子の創製】表面にポリアクリル酸によりカルボキシル基を修飾し,分散性に優れかつ生体分子配向に適した機能性二酸化チタンナノ粒子(50nm〜80nm)を作製した。 【生体物質の二酸化チタンナノ粒子への配向】ナノ粒子表面にはポリアクリル酸によりカルボキシル基が配向されていることより,N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステル法により緑色蛍光タンパク質(GFP)を容易に修飾できることを確認できた。従ってがん細胞を特異認識する抗体なども二酸化チタンナノ粒子表面に容易に固定化可能となった。 【がん細胞への高効率取込み機能の付与】二酸化チタンナノ粒子を内包した膜融合性リポソームを作製した。リポソームはエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ多くはリソソームで分解される。これを回避するため,センダイウイルス(hemaggutinating virus of Japan ; HVJ)の膜融合能を付与した二酸化チタンナノ粒子を内包したリポソームを作製した。HVJは紫外線照射によりウイルス自身の遺伝子(RNA)を完全に断片化しているため感染の心配はなく,またHVJはヒトに対して病原性を有していないため危険性はない。FITCで蛍光標識したポリスチレン粒子(200nm)を前述の方法でHVJ膜融合リポソームに封入し,細胞内へのナノ粒子導入について検討した。蛍光ビーズ内包リポソームをマウスリンパ腫由来細胞L1210に作用させ,蛍光ビーズ取り込み細胞を共焦点レーザースキャン顕微鏡にて観察した。さらにHVJ膜融合リポソームと未修飾リポソームの細胞との親和性に関してフローサイトメトリー法を用いて調べた。以上の実験結果から,膜融合リポソームを用いることにより内包したナノ粒子を効率よく細胞内に導入できることが示された。
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