下肢閉塞性動脈硬化症や虚血性心疾患を中心に静脈グラフトは今でも相当の頻度で使用されているが、移植後に平滑筋細胞の増殖などより静脈グラフト閉塞に陥ることがある。このような狭窄が移植後比較的急性期におこることもある。これを防ぐための核酸治療を考えている。まず我々が以前より注目している炎症の中心的役割を演じている転写因子NF-kbを抑制することにより静脈治療ができるか検討した。HVJ-リポソームを用いてNF-kbのおとりであるデコイをウサギの静脈血管に導入し、動脈とつなぎ合わせて狭窄の抑制が可能か実験したところ、NF-kbデコイ導入群で有意に平滑筋細胞の増殖を抑制し、接着因子ICAM-1の出現も抑制していた。このことからNF-kbデコイの静脈導入は効果的であることが判明した。 次に、超音波で静脈にFITCでラベルしたオリゴが導入できるか検討したところ、超音波と適量のマイクロバブルを同時に刺激することで静脈にオリゴが導入できることが確認できた。ただ今、マイクロバブルの種類を変えてどのマイクロバブルがより効果的であるか、検討している段階である。最終的には、最も効果的なマイクロバブルと超音波を最適の条件で併用することによってNF-kbデコイを静脈に導入して、グラフの狭窄出現を予防したいと考えている。HVJ-リポソーム法自体は安全性が高いと考えられているが、未だ臨床応用したときの安全性は充分とはいえないので、より安全な超音波とマイクロバブルの併用刺激にてオリゴを導入し、各種病態への治療法を開発していきたいと考えている。
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