本研究では脳虚血後の運動負荷に関しての動物実験を行い、脳梗塞に必要な安静臥床の期間と運動負荷の開始時期を決定するには様々な要因についての検討を行った。 本研究では砂ネズミに前脳虚血を負荷し、脳虚血負荷後に動物を安静群と超早期運動負荷群(脳虚血当日からの運動負荷)に分けた。運動負荷群は本研究費により購入したマウス・ラット兼用トレッドミルにより脳虚血直後から1日1回20分の走行を行わせた。安静群はケージ内で安静とした。それぞれ1週間後に断頭屠殺し、海馬を含む脳切片を作成し、染色後に海馬の神経細胞を定性評価した。さらに運動により直腸温度が上昇したため、コントロールとして運動時間に相当する時間に同等の高体温負荷を行った群を作成し、同様に検討を行った。 結果は本来、海馬では神経細胞死が生じない2分間の前脳虚血において安静群と超早期運動負荷群および高体温群の間に差が認められた。すなわち、安静群においては2分間の前脳虚血では海馬の神経細胞に細胞死は認められなかったものの、超早期運動負荷群では海馬の神経細胞死がすべての動物で認められた(それぞれN=6)。また、高体温群では安静群と同様に海馬の神経細胞に細胞死は認められなかった(N=6)。 以上の結果から、脳虚血直後からの運動負荷は従来では神経細胞死を起こさない軽度の脳虚血負荷において神経細胞死を誘発する事が示された。この神経細胞死は運動によりおこる高体温の影響によるものではない事がさらに示された。 以上から、脳虚血後はある一定の安静期間が必要である事が示されたが、その期間については未だ不明である。次年度は必要な安静期間の設定と、早期運動負荷による神経細胞死誘発のメカニズムを検討する予定である。
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