背景と目的:車椅子ウイリー動作の制御、学習に関する基礎的な研究が少なく、臨床的にも、基礎的にも探索的な研究が必要である。本研究では健常者ウイリー動作を運動学的に記述することを目的とした。方法:5分以上連続してウイリー動作が可能な健常男性5人を対象とした。予備研究として、ジャイロセンサーによる車椅子運動の測定をSCXIシステム(National Instruments)を用いて行ったが、ウイリー動作中に前後の移動が予想よりも大きく、またジャイロセンサーによる誤差が過大であったため、キネマティクスの測定を下記のように変更した。キネマティクスをVICON370システム(Oxford Metrics)で(マーカー位置は前頭部、後頭部、手関節部、および車椅子に4箇所)、キネティクスを床反力計(Kisler)で、筋電図(三角筋前部と後部、上腕二頭筋、上腕三頭筋の表面筋電)をME3000(Mega Electronics)で、外乱を圧トランスデューサ(協和電業)で計測した。課題条件は、開眼条件、閉眼条件、開眼外乱条件、視覚外乱条件とした。各条件とも30秒間の課題を3回繰り返した。外乱および視覚外乱は徒手で与えた。測定順序は上記の順序とした。結果:開眼条件では全ての被験者が課題遂行可能であった。開眼、閉眼条件ともに、床反力前後成分と車椅子傾斜角度が同期した動きをすることが確認された。この対応関係は圧中心よりも明らかであった。視覚が遮断されると、車椅子回転動揺振幅と前後移動の増大、床反力前後成分の振幅増大、周期増大、筋活動の増大を生じた。外乱条件については、刺激と応答の関係が時間的に逆転している場合が多く、関係が明らかではなかった。視覚外乱では、刺激に対応して動揺が増大する場合と全く認められない場合があった。考察と結論:キネマティクスと床反力は制御とスキルの把握のために重要な指標である。筋電図計測、外乱応答についてはさらに検討を要する。
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