【背景と目的】車椅子ウイリーの習得は車椅子生活者にとって重要であり、また、新規な姿勢制御動作課題としての可能性も秘めている。昨年度はウイリー熟練者の姿勢保持時の動作解析を行ったが、今年度は主としてその習得過程を明らかにすることを目的とした。 【方法】対象:18から23歳の健常女性9名を対象とした。運動課題と練習スケジュール:車椅子ウイリー姿勢を1分以上維持することを目的として練習を行った。予備実験の結果、概ね20分程度の練習で習得が可能であることがわかったので、1セッション1分間の練習を、2分間の休憩を挟みながら、目標を達成するまで繰り返した。練習方法は、実験者がバランス位に持ち込んだあと補助を放す方法を用いた。計測:3次元動作解析(VICON370システム)、床反力計測(KISLER)、内省の聴取を行った。予備実験の結果、筋電図と外乱刺激の有用性が明らかでなかったため行わなかった。計測は全ての練習試行に対して行った。 【結果と結論】5秒、10秒、20秒、60秒以上初めて維持できたセッション、および床反力計上(横120cm×縦90cm)で1分以上初めて維持できたセッションは、それぞれ平均6.3±3.2、8.4±3.9、10.4±4.8、13.3±6.1.15.3±5.9であった。また、poppingの練習は行わなかったが、1分以上ウイリーが可能になった時点では、平均3.3±1.3回の練習でpoppingが可能となった。この結果は今回の練習方法の有用性を示唆している。 車椅子の傾斜の振幅と床反力前後成分の振幅は練習とともに小さくなる傾向を示した。また車椅子の傾斜角度、床反力、および圧中心位置は同期する関係を示した。圧中心位置は練習の初期には前後の(特に前方への)移動が大きく、傾斜角度とはより複雑な関係を示したが、傾斜角度と床反力水平成分の同期は初期から顕著であった。
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