研究概要 |
VR(バーチャルリアリティ)を用いた遊びリテーションシステムを開発し,グループホーム(GH)の痴呆性高齢者に適用し,身体機能の維持,心理的賦活効果を検討している.まずはじめに,GH「西山の郷」の協力を得て実態,ニーズ調査を行ない,自立歩行機能維持と痴呆症状の進行緩和が重要課題であることを確認した.そこで,自立歩行機能維持の観点から2つの運動機能を維持・強化できるもの,痴呆症状の進行緩和の観点と継続的使用を実現するという観点より,入居者やスタッフが一緒に楽しめ会話を賦活することのできる2人1組で運動するゲーム性のあるシステムを考案し,エルゴメータと試作の運動器具による運動と,PCを用いたインタラクティブな映像提示(VR)を実現した.健常大学生を用いたVRあり・なしの比較実験で,VRの運動促進効果と楽しく運動できる心理的効果を確認した後,高齢者向けに一部変更・安全対策を施した.このシステムを「西山の郷」で64〜89歳の比較的元気な居住者5名(痴呆症状はいずれも軽度)と,スタッフ5名にペアを組んで体験してもらい,コンセプトの受容を確認した.GHスタッフの意見を取り入れ,さらに安全性に配慮しバランス器具の高さを低くして手すりを装置に組み込み,傾き計測やエルゴメータ回転数の計測の精度を向上した。コンテンツもよりわかりやすく得点加算などゲーム性の高いものを工夫した.改良したシステムのGH居住者への適用評価を2度にわたり実施した.現段階では,効果検証には至っていないが,2/3以上の入居者に参加してもらえており,適用性は確認されたといえる.次の実施を楽しみにしている人,得点アップをめざしている人もいる一方,コンテンツの理解が難しいケースもある.個人の痴呆症状・身体機能に合わせた適応性を高めることと,運動効果の定量的評価および日常的使用のための操作性向上が次年度の課題である.
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