1.健常人における床前後動揺刺激の基礎的解析 健常若年者を対象とした基礎実験では立位荷重時に足部の乗った板を前後水平に揺すると体幹および下肢筋に著明な筋収縮を引き起こすことが観察された。振幅20mmでは回転数が増えると共に筋収縮は減少し、振幅80mmでは回転数が増えると共に筋収縮は増加する傾向が見られた。どの条件を見ても、他の筋に比べ前脛骨筋と外側腓腹筋の下肢遠位筋の収縮が著明に見られた。各筋の筋収縮のパターンはリズミカルなものではなく、ほぼ一定の振幅で連続的に記録された。床反力については床振動の前方での方向変換時点に床自体は後方への加速度が最大になり床反力は後方に向かって大きく伸びた。反対に後方での方向変換時点には床反力は前方に向かって大きく伸びた。床反力の大きさと傾斜角度は振幅が大きくなればなるほど、また回転数が大きくなればなるほど大きくなった。 2.培養神経細胞による物理的振動刺激の作用の解析 振動刺激そのものが神経の再生に効果があるという仮説に基づき基礎実験を行った。我々はこれまでに神経作用物質を迅速かつ鋭敏に検出できる画期的な培養神経細胞を開発し、薬剤高感受性PC12細胞と命名した。この細胞は薬剤だけでなく振動やレーザーなどの物理的刺激にも反応することが判っており、これを前後動揺刺激の神経修復作用の解明に応用した。 今回我々は、前後動揺刺激実験の第一段階として、薬剤高感受性神経細胞であるPC12m3細胞にいろいろな周波数の音波振動刺激を与えて物理的振動刺激が神経再生に効果があるかどうかについて調べてみた。その結果、周波数の10〜100Hzに神経再生の促進が見られ、150〜200Hzでは効果が観察されなかった。また、最も高い有効性を示した周波数は40Hzであり痴呆に対する音楽療法などの臨床結果とほぼ一致した。
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