研究概要 |
本研究では,福祉用具の開発・設計支援技術として,人の動作生成シミュレーション技術を応用するための基盤技術の確立を目指しており,ここでは,義足を適用した歩行シミュレーションモデルを構築する.本年度は,研究の目標として,(1)股義足を適用した人体をモデリングする,(2)人体モデルを用いて歩行の数値シミュレーションを行うためのシミュレータを開発する,の2点を取り上げた.それぞれの目標に対する研究実績は下記である. (1)片側の脚の代わりに股義足(股関節より近位の離断,患者に使用される義足)を適用した人体のモデル化を行った.義足の各継手の角度と位置関係を実際の股義足着用例を参考に決定し,股義足の股関節にあたる継手をモデルの骨盤節に剛体接続することで股義足の着用をモデリングした.制御系に対応する神経モデルは,目標軌道を設定するような制御系ではなく,ヒトのセントラルパターンジェネレーターを抽象的に模擬したモデルであり,主に神経振動子の状態,筋骨格系の内部状態(姿勢とその変化速度や筋長,筋の走行状態)と外部状態(重力や接地情報)などから各関節への動作入力が設定される.これらを統合することで,筋肉・骨格・神経系を含み,3次元,全身の人体-股義足モデルを構築した. (2)義足の機械的特性および人体の身体特性を数値モデルとしてあらかじめ定めておき,身体モデルを駆動して歩行する際の制御系である神経系のパラメータに関して,遺伝的アルゴリズムを用いることで探索を行うプログラムを作成した.本プログラムでは,パラメータ探索に際して,歩行時の消費エネルギ最小や動作の滑らかさなどを評価指標として選択することが可能で,その指標に対して最適な歩行動作が生成される.本プログラムによって3次元多数歩,全身の妥当な股義足歩行の再現に成功した.
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