研究概要 |
体育・スポーツ科学の研究においては、人間を被験者として研究する場合が数多くある。人間を被験者とする場合にはヘルシンキ宣言に則り、インフォームド・コンセントが不可欠であることは論を待たない。しかし、被験者へのインフォームド・コンセントによる同意書の形を採っても、実際は、さまざまな人間関係に基づく、自主的とは言えない同意があるときく。 よって本研究の目的は,体育・スポーツ科学研究に協力する被験者への人権がどのような形で擁護されているかを明らかにすることである。具体的には、被験者や被調査者に対して、研究・実験の目的・方法・内容、等々が十分にインフォームされて、被験者が主体的、自主的に参画を決定しているかどうか、さらに各組織(大学、研究機関、学協会、等)が研究倫理規程をどのように扱っているかを明らかにする。 事前の予備的な大学生への実態調査では,被験者への説明が簡略化されていたり、被験者の中には、実験研究結果や成果をフィードバックされないことへの不満を訴えるケースが見られた。また運動部の顧問教官や先輩の要請をうけて被験者を受諾した場合や、授業時間中に十分な説明もなく調査をやむなく応じた例も見られた。こうした被験者の徴集や調査方法は、明らかに被験者や非調査者の主体的、自主的な参画とは言えない状況を醸し出している。今後,詳しい調査が要請される。 また、今年度は研究の初年度ということで,日本,ドイツ,オーストラリア,ニュージーランドの研究機関から研究倫理規定に関する資料を収集した。次年度に向けて,各国の研究倫理規定や被験者の人権への配慮について,詳細に検討を進めていく。
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