研究概要 |
「一部の体組織が急速に成長特化することが,他の組織へどのような波紋をなげかけるのか?」という課題はいまだ明らかではない.本研究では,この課題について次のような仮説を立てた.発育スパート期には骨格や筋組織が一挙にその成長を加速する.組織成長には血流増加が必要であるが,心拍出量には限界があるため,骨格や筋への血流増大を支える血流減少対象として,発育期には脳血流の低減が起こるのではないかと仮定した.この仮説を検証するため,本年度は脳血流指標の妥当性と実用性を検討した.まず(1)近赤外光分析法による酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化,(2)超音波画像診断装置を用いた経頭蓋脳内血流として,前大脳動脈,中脳大動脈(MCA),後大脳動脈の血流計測技術について検討をした.また,心拍出量(CO)を同時計測が本研究には必要であり,そのために指動脈圧波形法によるCOの推定値の検討を行った.その結果,次のようなことが明らかとなった.(1)近赤外光分析法による酸素化ヘモグロビン/脱酸素化ヘモグロビンの指標は,頭蓋形状により,また女子ではS/N比が低下しがちであり,頭頂葉,側頭葉では信号が捉えにくかった.また血圧変動による影響を受けやすいことが示された.(2)超音波ドップラー法によるMCA血流については,計測者が熟練すれば,血流速度の計測が可能であり,被験者の拘束度も低く,再現性のある測定値が得られた.しかしMCAの血管径を正確に計測することは難しく,また前大脳動脈と後大脳動脈における血流計測の精度得られ難いことが示された.このことからMCA血流速度計測は仮説の検証に適用可能と考えられた.(3)指動脈血圧計によるCOの推定値は,安静時であれば,超音波法における値に近似することが示され,この手法も本研究に適用可能と考えられた.
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