本年度は、ロボットを作成する前段階として、実際の人間の泳ぎを分析し、シミュレーターを用いて、各関節間に生じるトルクやモデルによって発揮される流体力の推定を行った。シミュレーションには、水泳人体シミュレーションモデルSWUMを実装したフリーウェアーSwumsuit ver.1.0.0(中島、2005)を用いた。シミュレーションに先立ち、実際の人間の泳ぎ、特にドルフィンキックに着目し、ドルフィンキックに熟練した被験者を用いて水中動作を三次元画像分析した。分析にはDLT法を用い、各関節ポイントの三次元座標を抽出した。次に被験者の形態に関する測定値をシミュレーターに代入し、さらに各関節ポイントの時系列座標を入力し、流体力の推定を行った。 水泳人体シミュレーションモデルは、計16のシリンダーから構成される。それぞれのシリンダーが水中で運動する際、シリンダーを微小な楕円に輪切りにし、その表面に働く揚力および抗力を計算し、それをシリンダーの長手方向に積分し、シリンダー全体に働く流体力及びモーメントを計算した。さらにシリンダーが水面下にある部分に関しては浮力も加味し、すべてのシリンダーに働く力を統合し、推進方向に作用する力のみを推進力として算出した。 シミュレーションの結果、実際の人間の泳ぎを分析したデータをモデルに注入した場合、実測では1.1m/sの泳速度を達成していたのに対して、モデルでは、ほぼ同様の1.07m/sの速度を達した。このことより、本シミュレーターの妥当性が立証されたと言える。今後は、このシミュレーション結果を用いて、ロボットを作成する際の各部位のサイズや関節運動を駆動するモーターの出力等を検討して、来年度以降の実際のロボット作成につなげたい。
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