研究概要 |
初年度は、(1)情動ストレス誘発のために適切な刺激法の決定(2)情動ストレスがP300潜時に及ぼす影響を的確に捉えるための実験プロトコルの決定を研究目的とした。 若年健常ボランティア39人(21.8±1.8歳)を対象に、日本光電社製NeuropackμでFz、Cz、Pzを関電極とし、聴覚オドボール課題で事象関連電位を記録した。プロトコルは安静時に2回事象関連電位を記録し、その後情動ストレス負荷を3分間行い、直後と、負荷後20分に事象関連電位を記録した。情動ストレス負荷は(1)鏡映描写試験(2)暗算で行った。また、対象をストレス抵抗性の強弱で2群に分けるため、JAS shortform NでタイプA(虚血性心疾患risk factorとなる行動パタン)を評価した。各記録のN100,P200,N200,P300潜時を測定し、タイプA群、タイプB群で比較検討した。 反復記録で各潜時は変化せず、疲労効果・学習効果はないことが分かった。ストレス負荷でN100、P200潜時は変化しなかった。(1)鏡映描写負荷では、N200潜時はタイプA群でのみ負荷20分後に短縮した。P300潜時はタィプBでは負荷20分後に延長し、タイプAでは負荷直後,20分後と継続的に短縮した。(2)暗算負荷では、P300はタイプAのPzで負荷20分後に短縮し、タイプBのCzで負荷直後に延長した。 以上より、タイプA群でのみストレス負荷でP300潜時が短縮するので、ストレス負荷前後のP300潜時を比較することで、ストレス耐性を推測することが可能であると考えた。また、ストレス負荷法により潜時の経時的変化パタンが異なるが、暗算負荷では、P300振幅が最も大きくなるPzでより著明な潜時短縮を確認できたので、ストレス耐性検査法として本法を用いる際は、検出力向上のため、暗算負荷が優れていると考えた。
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