本研究の目的は、いわゆる「環境絵本」と称されている絵本や、そのように称されていなくとも環境に関わると考えられている絵本を分析することによって、人間の日常の「教え=学び(模倣)」の生活の中に埋没して不可視的になっているが、非常に重要な教育活動である「環境についての教育」(「既存型環境教育」)を言語化し、かつ、視覚化することであった。 「すでに子育てのなかに存在している環境教育」を再発見する手がかりが、絵本や環境絵本にある。そのため、できる限り多くの絵本を収集し、検討した。そして、自覚的な「環境絵本」と、環境問題を扱った「環境問題絵本」、広い意味で環境教育や環境にかかわる「環境関連絵本」を抽出した。 具体的には、環境絵本とされる絵本を17冊程度(微妙なものも含むため)、また、環境問題に関する絵本を20冊程度、さらに、環境とのかかわりに関する絵本を80冊程度、検討した。次に環境絵本のジャンル別にその特徴を示しておこう。 「環境絵本」:自覚的に環境教育で扱われることを狙っており、親に対する教育の視点を含むが、子どもにとっては説教くさくて面白くない書が過半数を占める。地球を丸ごと描いている点や、動植物の苦しみは示される視点、リサイクルなどを進めようとする意欲的な点はあるにせよ、子どもにとっての魅力は今ひとつである。その理由は希望のなさや面白さのなさにある。 「環境問題絵本」:ほとんどが大人も対象として環境問題の解説書となっており、小学生以上でないと分からないような内容が多い。本研究では、こうした絵本の「子どもにとっての魅力」を見出せなかった。 「環境関連絵本」:環境教育を意図して書かれてはいないが、環境に関する「教え=学び」を含む「環境教育的絵本」であり、非常に魅力的な内容を持つ。たとえば、循環の視点を扱った絵本、都市化・産業化の矛盾を扱ったもの、人間と動物との関係を教えてくれるものなどがある。
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