本年度も、本研究において「環境絵本」関係であると考えられる絵本を140冊あまり収集するとともに、その分析をすすめた。 とりわけ、地方自治体が、市民団体や企業、幼稚園教諭らと協力して作成する絵本について、詳細にその制作過についての情報収集を行った。具体的には、茅野市、長野市など、かなりの地方公共団体が、10人から20人程度の幼稚園教諭や保育士らの協力を得て、こうした環境絵本の制作にかかわっていることが明らかになった。 一方で、市民が自主的に作成した自費出版の絵本のなかにも環境絵本があることや、大学や短期大学などの保育士養成校でも、授業や実習等の活動で環境絵本を作成していることも明らかになった。そうした「環境絵本」は、話の内容も絵も単純ではあるが、その製作過程が環境教育的であることが看取された。 また、環境絵本の分析枠組みを作るために、絵本論に関する文献研究をおこなった。今後は、次の二つの軸を手がかりにして、環境絵本を分析することになる。 ひとつは、「存在と所有」であり、もう一つは「贈与と交換」である。 まず、エーリッヒ・フロムの「生きるということ(To Have or To Be?)」のなかで分析枠組みとされている持つ存在様式とある存在様式で生きる人間の姿が環境絵本に出現しているということを手がかりにして、今後の分析をすすめたい。 もう一方は、マルセル・モースやジョルジュ・バタイユらの、贈与論や社会学、人間学、人類学の視点から、自然からの贈与をいかに受け取るか、ないしは分配するか、そして、機会があれば、どのようにして返礼するか、といった「贈与と交換」にかかわる視点である。 こうした文献研究でえられた視点をもとにして、環境教育の教材としての絵本と、そのような意図はなくても環境絵本の要素を持つ絵本を分析してカテガライズした。
|