衣服の快適性は衣服内気候、衣服圧、肌触りに依存すると言われている。中でも、衣服内気候は皮膚と衣服の間の微小空間内の気流、温度、湿度の総称を指すが、ここでは人体からの発汗・発熱による生地を通しての複雑な熱と水分の移動現象が生じている。そのため、衣服内気候の測定は非常に難しく、その評価は大概的段階に留まっている。本研究は、この衣服内気候の計測手法を確立することから始める。当初、二波長ホログラフィ干渉法を適用することを計画していたが、試行錯誤の結果、赤外線吸収法と実時間ホログラフィ干渉法(以下HI法)を組み合わせた未だ実用化されていない計測手法を衣服内気候に適用するに至った。衣服内気候を再現させるための試験部は、液面上方の測定部、液体を満たしておく液層部と液温を一定に保つための恒温部から成り立っている。液層部容器は、長さ160mm、幅60mm、深さ5mmとした。なお、温度検証用として、液面から垂直方向へ1mm間隔で0.1φのK型熱電対を配置した。実験は、液温が設定温度40℃一定になった後、容器上端面の位置に設けられたシャッタを開放することにより行われる。また、本研究では、不感蒸泄に焦点をあてることとし、液にはプロパノールを用いた。まず、衣服を設置しない場合の準定常状態に対し、本計測法を適用し、本計測法の測定精度の検証を行った。本手法の測定結果は、熱電対による温度分布および熱電対とHIの測定結果から算出された濃度分布と比較された。両者の測定結果は、最大でも10%の範囲内で一致し、本計測法により満足できる範囲内で温度・濃度分布を計測できることを確認した。つぎに、本計測法を、生地を設置した場合に適用した。生地は親水性及び疎水性生地として綿、ビニールを用いた。測定結果は生地による蒸発特性の特徴的差異を示しており、本計測法が衣服内気候の計測に有効であることを示すことができた。
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