研究概要 |
衣服の快適性は、湿感、冷感、圧感などを感知する神経終末小体が皮膚にあることから、衣服と皮膚の間の微小な空間の温度・湿度・気流に依存すると言われている。この空間では、人体からの発汗・発熱により時々刻々温度・濃度が変化するという生地を通しての複雑な熱と水分の移動現象が行われており、快適性との関連性を明らかにするためには、この空間での温度・濃度分布を非定常計測する必要がある。しかし、現在のところ、この現象を測定でき得る有効な非定常測定法はなく、したがってこの空間も大概的な評価に留まっている。本研究では、赤外線吸収法(以下IR法)と実時間ホログラフィ干渉法(以下HI法)を組み合わせた未だ実用化されていない計測手法を、この空間に適用し、計測法の実用化を図りながら、衣服を挟んでの温度・濃度分布の計測を試みた。 まず、本計測法を、生地を設置せずに開放させた場合の準定常釈態に対し適用し、測定精度の検証を行った。熱電対を基準にした結果と本計測法による測定結果は、最大でも10%の範囲内で一致し、本計測法により満足できる精度で温度・濃度分布を計測できることを確認した。次に、同じ空隙率と厚みを持つ綿とナイロン(親水性および疎水性生地)に対して本計測法を適用し、この微小な空間(液面と生地の隙間5mm,ノーマルプロパノールを使用)の計測が可能か否かを検討した。両画像から算出された温度・濃度分布は、時間の推移とともに分布形が変化し、生地の違いによる熱および物質移動への阻害の影響を定量的に示していた。また、得られたIR画像とHI画像を重ね合わせることにより、蒸気の生地を透過して行く様子を印象的に可視化表現することにも成功した。本研究により本計測法の有効性を立証できたことから、今後本計測法を適用し生地を系統立てて変化させ同様な実験を行っていくことで、この空間と快適性の関係を明らかにできる可能性を見出した。
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