今年度は、なれずし、漬物などの伝統的な発酵食品を分離源とし、乳酸菌分離培地であるGYP平板培地を用いて、乳酸菌の分離を行った。その結果、96株の乳酸菌を分離することができた。この分離乳酸菌および申請者保有の保存の乳酸菌について、グルタミン酸含有培地にて嫌気培養を行い、培地中に生成したγ-アミノ酪酸(GABA)量を、高速液体クロマトグラフィー(逆相イオンペアクロマトグラフィー/ポストカラム誘導体化法)にて測定を行い、GABA生成能の有無を確認した。その結果、数種類の乳酸菌がGABAを生成することが明らかとなった。GABAの生成量は菌株によって、かなり差があり、その中でも、水産系発酵食品から分離された3株のGABA生成能が高かった。そこで、この3株について、小サブユニットribosomal RNA遺伝子断片を遺伝子増幅装置により増幅し、塩基配列を分析し、遺伝情報データベースによるホモロジー検索により、同定を行った。その結果、1株がEnterococcus属、2株がLactobacillus属の同種の乳酸菌であると同定された。Enterococcus属の乳酸菌についてはこれまでGABA生成能を有すると報告されてきた菌とは異なる属種の乳酸菌であった。次年度は、さらにGABA生成乳酸菌の検索を行うとともに、同種のGABA生成菌と非生成菌の塩基配列の違いについて分析を行う予定である。
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