本研究で、ハスの葉茶の摂取はヒトの身体温に対して温熱作用を示すことが確認できた。さらに、温熱作用が現れた部位や程度は、室温の違いにより差が認められた。すなわち、被験者が寒冷ストレスを受けている状況では、指先、手首、足首といった抹消に温熱効果が認められ、寒冷ストレスのない状況では上半身を温めるということが示された。また、ハスの葉茶特有の苦みの影響を考慮した凍結乾燥粉末入りカプセル(カプセル)を用いた同様の実験では、ハスの葉茶とカプセルで、温熱作用を示す部位、効果の認められる時間が異なるという結果を得た。この点については、今後の検討課題である。 一方、われわれは、このハスの葉茶の温熱効果にはポリフェノールが関与しているのではないかと推測した。そこでハスの葉茶(ハスの葉茶の熱水抽出物)の構成ポリフェノールを明らかにするために、まず、植物に含まれている既知ポリフェノール24種について、フォトダイオード検出器を用いたHPLC分析を行い、クロマトグラム上の溶出時間、吸収スペクトルなどの情報を整理した。次に、ハスの葉茶の熱水抽出物について同様のHPLC分析を行い、作成したデータベースと比較した。HPLCクロマトグラム上では2つのピークが顕著に認められ、この2成分が主たる成分であることが明らかとなった。標準ポリフェノールのデータと比較したところ、一つはgallic acid、もう一つはluteolinと類似した吸収スペクトルを示していたが、同定するには至らなかった。今後、この成分を明らかにすることによって、成分レベルでの温熱効果を明らかにできるのではないかと考える。
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