1.食生活における「香り」の生理を明らかにするために必須である「食事」による自律神経反応について 加速度脈波測定を利用した簡易的な自律神経検査装置を用い、日常の生活における食事摂取と同様の環境下において自律神経反応を観察した。周波数解析方法としては、最大エントロピー法(MEM)、その指標としては、0.02〜0.15HzのLF成分と0.15Hz以上の周波数のHF成分、及びその比であるLF/HFを用いた。結果、安静時に比べて食事摂取直後にLF/HFの値が上昇する者が多く認められた。その後、時間経過と共に値が減少する傾向が認められたが、減少に至る時間については、対象者によって一定しなかった。HF成分は、副交感神経、LH成分は、交感神経と副交感神経、その比LF/HFは、交感神経機能を示している事より、今回の研究の結果は、食事摂取により一時的に交感神経が優位になるが、その後消化に伴い副交感神経が優位になることを示している。しかしながら、その経時変化については、各人の自律神経の反応性により異なってくることを示している。 2.「芳香植物」の生理反応について(カオス解析) 消化促進作用の認められるレオングラス、リンデン飲料の健康度評価を加速度脈波測定を利用したカオス解析によって観察した。指標としてはリカレンスプロット(RP-dw)、軌道平行速度(TPM ave)を用いた。結果、対照としての水摂取では、RP-dw、TPM aveそれぞれが殆ど変化が認められなかったのに対し、レモングラス摂取直後において、RP-dwの減少、TPM aveのわずかな上昇を認めた。一方リンデンにおいては、TPM aveのわずかな減少を認めたが、RP-dwの変化に一定の傾向は認められなかった。RP-dwは、ホメオスタシスの状態を示すと考えられ、その数値が大きいとホメオスタシスは破綻傾向にあると言われる。一方、TPM aveは乱雑性の指標とされ、数値が大きいと乱雑さが高いと言われる。今回の結果は、芳香を有する食事により、健康度に差が生じることを示しており、その変化には香りに対する好みが影響していることを示唆している。疲労回復作用が高く、「すっきりした」気分と評価されたレモングラスではホメオスタシスが保存傾向になったと考えられる。一方、香りのはっきりしないリンデンでは、健康度に大きな影響を与えなかったと考えられる。 3.「芳香」の好みと生理反応について(カオス解析) 精油吸入と「香り」の好みについて検討した。結果、好ましい「香り」に対してRP-dwの減少を認めたが、TPM aveについては一定の傾向を認めなかった。さらに、例数を増やして検討を加えたい。
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