日韓両国は各々の長い歴史の中で独自の食スタイルを構築してきたが、共に食の欧米化が急速に進み、食の継承が困難な時代に入った。食べることに重きを置かなくても生きていける社会の実現は、特に食を通して子どもの心と体を作ることの重要性を忘れさせる。そこで日韓両国の食生活や食継承の実態を調査し、子どもの健全な育ちを支える食管理能力の育成や今後の望ましい食の継承方法について検討した。日韓共通の調査票を作成し、平成16年10月から12月にかけてアンケート調査を、平成17年に学校給食の調査を実施した。アンケートでは(1)生活状況・食生活状況、(2)箸の持ち方や食マナーなど食育や食行動、(3)伝統食の継承について質問した。対象者は日本は関西地区の男女大学生420人、韓国はソウル市の男女大学生388人であった。両国を比べると韓国は1日に3食食べる者が少なく、不満要因の一番に朝食の欠食が挙がっていた。魚は日本に、果物は韓国に多く摂られていたが、飯、大豆、野菜はほぼ同程度で、食生活に対する満足度点(自己評価で10点満点)の平均は日本6.3点、韓国6.4点で違いは見られなかった。箸使い等の食事マナーの評価点は韓国の方が、適正な食事のとり方は日本の方が有意に高かったが、それらについては両国ともに8割の者が両親から教わったと答えた。食育を積極的に進めるべきであると答えた者は両国ともに90%あるが、今後の食育の担当場所を学校と答える者が韓国に有意に多かった。(3)の伝統食の継承度、学校給食に対する家庭の関心度は韓国の方が上回っていた。しかし、家庭内の縦の継承機能の低下が窺われ、今後は両国共に地域社会や学校を中心とする横のつながりを強め、心を育む食継承のあり方をよりグローバルな視点から考えていかねばならないと考える。
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