研究概要 |
高齢化が急速に進行しつつある現在,加齢に伴う免疫力低下は周知の事実である。日常生活の様々な要因が問題として存在するなか女性に注目し,年齢差による免疫能を捉えることを目的に唾液を採取,分泌型IgA濃度測定および背景となる生活状況,食生活についてアンケート調査を行い検討した。 老齢期女性(特養およびグループホームに在住)72歳から92歳までの高齢女性30名と,若年女性(女子大学生1年)18歳から20歳82名を対象とした。唾液採取はキットを用い,高齢女性は3分間,女子大生は1分間の唾液を採取した。試料は唾液量,IgA濃度(ELISA法),タンパク質量(Protein Assay Kit)を測定した。調査項目は生活状況(睡眠時間・身長・体重・体調・運動等)、食生活(欠食・嗜好等)を設定し,高齢女性には義歯の有無,女子大生は1日間の食物摂取状況を確認した。測定値と各回答についてt検定を行い検討した。 1分間あたりの唾液量は女子大生が有意に多い結果であった。高齢女性での総義歯は54%と半数を占めたが,残存歯数の多いものほど唾液量が多かった。肥満度による唾液量の相違はいずれの年代でも大差なかった。IgA濃度およびタンパク質量は,唾液量とは逆に高齢女性の方が有意に高値を示した。女子大生では肥満度による分類でIgA濃度に差が認められ,「普通」より「やせ」の方が有意に低値を示した。欠食の有無については大差を認めなかった。年齢の若い女子大生はIgA濃度の薄い唾液が多く分泌されており,高齢女性は唾液のIgA濃度は濃いが分泌量が少ないことが推察された。 高齢女性は施設において栄養量の考慮された食事を規則的に摂取しているのに対し、女子学生は下宿生が多く,1年生という学年より学生生活に不慣れな点が多く食生活も不規則なものが多い。今後更にデータを集めて検討を進めていく予定である。
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