研究代表者は、今年度は様々な学会・研究会に出席し他の諸機関の研究者との交流を通じて「予知医学」概念の明確化を模索した。主な出席学会・研究会は、日本生命倫理学会、日本医学哲学倫理学会、長崎県国保地域医療学会、京都生命倫理研究会、岡山生命倫理研究会、西日本生命倫理研究会、長崎遺伝倫理研究会、福岡応用倫理研究会、西日本出生前診断研究会、文部科学省の「ヒトES細胞研究と生命倫理に関する公開討論会」等である。そのうち日本生命倫理学会では代表質問者、国保医療学会ではシンポジスト、岡山と西日本の生命倫理研究会では研究発表、西日本出生前診断研究会ではシンポジウムの座長を務めた。また研究代表者が主宰する福岡応用倫理研究会は月一回のペースで開かれており、主として生命倫理・医療倫理をテーマにして活発な議論を行ってきた。また、長崎遺伝倫理研究会ではその成果を「遺伝カウンセリングを倫理する」(診断と治療社)というタイトルで出版することができた。さらに、これらの学会・研究会での他の研究者との交流や情報交換によって多くの知見を得、大変有意義な一年になったと思っている。 研究代表者の今回の研究テーマに関して所感を述べてみる。上に述べたような学会・研究会では、広く生命科学の諸分野で、今後の遺伝医学のあり方がしばしば問われており、「予知医学」がある程度意識されている場合もあるが、多くの場合、「予防医学」と混同され、明確に「予知」が意識されてはいないようである。研究者たちの多くの関心が遺伝医学の推進や、推進を前提にした倫理的配慮という程度にとどまっており、遺伝医学あるいはより限定的に「予知医学」が社会や文化へ与える影響ということを視野に入れた研究あるいは関心は薄いとの印象を持った。代表研究者としては、残された二年間の研究期間、その方面への研究に専念し、しかるべく成果を挙げたいと思っている。
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