研究概要 |
1.モンゴルの地上気象データと衛星データから計算された植生指標(NDVI)を使って,気象要素の変動が植生活動度に与える影響について調べた.NDVI急増期(植物成長期:5-7月)の植生活動度と11-12月の気温とは有意な負の相関(99%有意水準),1-3月とは有意な正の相関が見られ,季節により気温の影響の仕方が異なる点が興味深い.NDVI極大期(植物繁茂期:7-8月)の植生活動度は1-2ヶ月前の降水量と正の相関が非常に高く,極大期の気温と負の相関が認められた.また,NDVI急増期とNDVI最大期の植生指標は1-数ヶ月前の気象要素と相関があるため,1ヶ月前までの月平均気温・月降水量を説明変数に用いたNDVI急増期・NDVI最大期のNDVIを予測する実験式を各地上観測毎に作成した. 2.7-8月の植物繁茂期の植生指標に大きな影響を与える降水の季節進行の特徴を調べた.モンゴルでは6-8月に降水の約80%がもたらされるが,7月中旬には降水量が減少する「雨期の中休み」が存在することを明らかにした.この中休みの原因は次のように考えられた.6-8月にユーラシア大陸で亜熱帯ジェット気流に補足された定在Rossby波が顕著になり,7月中旬に最も発達する.この定在Rossby波は順圧的な鉛直構造を持ち,かつ,Rossby波の位相はモンゴル域で気圧の峰になっている.そのため,モンゴルでは7月中旬に背の高い気圧の峰が発達し,降水が減少する.また,定在Rossby波の年々変動と7月の降水量変動がよく対応していた. 3.2002年11月-2004年8月のモンゴル空港レーダーデータを入手し,降水量分布データに変換した.同期間のSPOT_NDVIデータも入手した.2002年は少雨であり,2003年は平年並みの降水がもたらされていた.それに対応して,植生活動度の絶対値や季節進行にも違いがあることを予備解析で明らかにした.
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