研究概要 |
今年度の研究成果は,次の二つに大別される. 1.1960年〜2003年までのモンゴル全域に亘る日雨量データを作成して,植生指標の変動に大きな影響を与える6-8月の降水の年々変動の特徴とその変動を決めている要因について調べた. モンゴルの暖候期降水量の季節変化には,7月中旬に降水量が増加するA型(計13年)と,逆に,7月中旬に降水量が減少するB型(計12年)が見られた.A型は1960年代に,B型は1980年代に頻繁に出現し,1990年以降はA型とB型とが出現していた. A型年には,7月中旬頃に定在ロスビー波に伴う気圧の谷がモンゴルを覆い,降水がもたらされやすい循環場が作られていた.一方,B型年には,7月中旬頃に定在ロスビー波に伴う気圧の峰がモンゴルを覆い,降水が起き難い循環場が作られていた.つまり,ユーラシア大陸規模の定在ロスビー波の年々変動が,モンゴルの降水の季節変化を決める一つの要因であることが分かった. 2.これまでに2003-2005年の3年間のレーダー降水分布データとSPOT-NDVIデータが蓄積された.このデータを用いて植生変遷域の時空間変動とレーダー降水量分布の関係について解析を行い,次の知見を得た. 2003年7月には,ウランバートルの西の平原において,数10kmスケールの範囲に多量の降水がもたらされた.この雨域に対応して,8-9月には植生指標(NDVI)の正の偏差域が出現していた.レーダー降水量を用いて,植生活動度の2次元的な季節予報の可能性が示された.
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