手賀沼周辺における地下水と沼の水の交流関係を明らかにするために、手賀沼周辺の一角を調査地とし、水質、地下水位の測定を行い分析することで検討した。その結果をまとめると以下のようになる。 1)台地から沼にかけての地下水は、水質の観点、全水頭の観点からも連続性を持っており、台地から流れてきた地下水は低地を通り、手賀沼に達することが明らかになった。 2)台地上の人間活動によって汚染された地下水は、人間活動の影響がほぼないと思われる台地斜面の地中を下り、浄化される。しかし、その浄化された地下水は低地中央部から沼にかけて続く農園で使用される肥料などの影響により再び汚染され、沼に流入する。 3)手賀沼の水の汚染よりも沼岸の地下水汚染の割合のほうが大きく、農園の下を通ってきた地下水が、そのまま沼に流れ込むことは沼の水の水質を悪化させる要因となり得る。 4)台地上の井戸の地下水位のピークは冬季であり、沼岸のピエゾメーターの地下水位のピークは春季であるため、このピークのずれは台地上から流れる地下水がゆっくりと浸透、流動するために沼岸にいたるまでに時差が発生したためだと思われる。 5)夏期から秋季にかけて全体的にイオン濃度は増加しており、要因として生物活動の活性化などが考えられるが、解明にはより長期の調査が必要である。 6)現在と20年前との全水頭の比較からは、大きな差が見られなかった。20年前に比べ、人口の増加による産業排水、家庭排水、農園の肥料などによる汚染が増大している。台地斜面の地下水浄化作用は20年前と比べて、それほど衰えてはいない。
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