研究課題
本研究は、水俣湾に残留する大量の無機水銀が底泥中の懸濁態粒子に吸着し、あるいはメチル水銀CH_3Hg^+の状態で溶出し、高波浪時に巻上げられるとともに、潮流などの流れによって輸送されながら八代海内を拡散していく過程を高精度に予測できる水銀動態モデルの開発を最終目指として、下記の研究項目について平成16年度の研究を実施した。(1)底泥中の懸濁態粒子の巻上げに関する現地観測;海底設置型超音波ドップラー流速計(Aquadopp Profiler ; Nortek社製)、WaveHunnterΣ1台、砂面計1台および連続観測用濁度計4台(COMPACT-CL;アレック電子社製)から構成される連続濁度観測システムを開発した。このシステムにより潮流・波浪と濁度を同時に長期計測することが可能となり、波浪や潮流などの外力と底泥の巻上げ量(濁度)との関係を明らかにすることができるようになった。平成16年度は、本観測システムを2004年12月12日〜2005年1月30日まで約50日間、水俣湾の西側湾口部中央に設置し、現地での長期連続観測を実施した。(2)底泥内残留水銀濃度および直上の海水中水銀濃度の測定;波浪や潮流などの物理学的要因によって底泥が巻上げられた場合に、「残留水銀が懸濁態粒子に吸着した状態」および「メチル水銀(CH_3Hg^+)が海水に溶出した状態」の組成を解明するため、水俣湾内の3地点(西側湾口部、湾中央部、北側湾口部)で海水中水銀濃度の鉛直分布に関する季節変動を測定した。採水調査は、2004年7月18日、9月12日、10月30日、12月12日および2005年1月23日に実施した。とくに、採水のタイミングは大潮の下げ潮最強時を挟む前後1時間とし、各測点では水表面、水面下2m、水面下10mおよび海底面上1mの4点で計12サンプルの採水試料が毎回採られた。その結果、SSの鉛直分布には顕著な季節変動が認められないこと、懸濁態の総水銀の鉛直分布が9月末から10月末までの間に増加したこと等が判明した。なお、水銀濃度の測定については、世界でも有数の高精度測定技術を有する国立水俣病総合研究センターにおいて実施された。(3)水俣湾における残留水銀の動態予測モデルの開発;得られた観測データに基づいて、底泥の巻上げ量(濁度)と海水中の残留水銀濃度との相関関係を現在検討中である。今後は、その結果を用いて形態別水銀の組成状態を考慮した残留水銀の動態予測モデルを開発予定である。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
土木学会・水工学論文集 第49巻
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土木学会・海岸工学論文集 第51巻
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