研究概要 |
メヒルギが優占する漫湖湿地に陸側から海側に向けて120mx5mのベルトトランセクトを設定した。これを,5mx5mの24個のサブプロットに区分けし,各プロットの毎木調査(樹高H,生枝下高,樹高の10%高での幹直径D_<0.1>,樹冠長)を実施した。また,このベルトトランセクト外で伐倒調査を行い,地上部重とD_<0.1>^2Hとの相対成長関係を得た。 海側には,D_<0.1>/H比が高い矮性型が出現し,土壌の塩濃度の高さに対応していた。林冠の閉鎖度は全てのプロットで100%以上であり,枯死個体が観察された。また,閉鎖度は海側から陸側に向けて増加し,ほぼ300%のピークに達した後,陸側に向けて減少した。このことは,メヒルギ林の生育段階が,海側での実生段階から中央部での最盛段階,そして,陸側での成熟段階と連続しているものと思われる。 相対成長関係から推定した個体の平均地上部重は,海側から陸側に向けて増加した。これに伴い,個体重の頻度分布のばらつきを示す標準偏差も増加した。しかし,変動係数はほぼ一定であることから,個体重の頻度分布の海側(若齢林)から陸側(成熟林)への推移は変動係数が一定に保たれるように変化していることが明らかになった。平均個体重と密度との間には,自己間引きの法則が認められ,自己間引き直線の傾きは-4/3となり,他の殆どの林分で認められている-3/2よりも大きかった。 葉の窒素量当りの光合成速度は,海側から陸側に向けて有意に増加し,海側におけるメヒルギの光合成速度に対する窒素の効率が低いことが判明した。このことは,海側における、土壌の塩濃度に関係している可能性が考えられるので更に検討を加えたい。
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