研究概要 |
漫湖湿地のマングローブ林の主要構成樹種であるメヒルギの個葉の光合成速度と暗呼吸速度の葉群内の垂直変化を2年間に渡り毎月測定した。光合成速度と暗呼吸速度は様相の上部から下部にかけて減少し,低光度域での量子収量は上部から下部にかけて増加した。このことより,個葉が群落内の光環境に適応しながら,群落全体の光合成生産を営んでいることが判明した。年群落光合成生産量,葉群呼吸量,剰余生産量はそれぞれ130,44,59Mg CO_2 ha^<-1>yr^<-1>と推定され,年群落光合成生産量のエルルギー効率は2.4%であった。 年群落光合成生産量は葉面積指数の増加に対して飽和し,一方,年葉群呼吸量は葉面積指数の増加に対して増加した。したがって,年剰余生産量を最大にする最適葉面積指数が存在し,この最適葉面積指数は実測値4.5ha ha^<-1>とほぼ一致した。メヒルギ林は光合成速度の低い下層の葉を落とすことで,年剰余生産量を最大に保っていると考えられた。 マングローブ葉の分解過程と,マングローブ湿地に生息しているカニ類や干潟に生息している巻貝類の物質循環系に果たしている役割について解析した。葉の分解過程はマングローブの種によって異なり,脂肪酸組成の変化から葉の分解に対するバクテリアの関与過程の違いを明らかにした。また,大型底生動物による干潟環境の撹拌活動が干潟表面や巣穴内の微生物環境や炭素あるいは窒素循環過程に及ぼす影響の程度を定量化した。
|