研究概要 |
本研究は,1)大気微小液滴への揮発性・疎水性有害有機汚染物質の濃縮機構、2)大気微小液滴内での有害有機汚染物質の増感光分解機構を明らかにすることにより,有害有機大気汚染物質の動態に及ぼす大気微小液滴の役割を解明することを目的としている.本年度は初年度であるので,(1)の目的について検討を行った. 東京都西部に位置する東京都立科学技術大学(日野市)4階建て講義棟屋上で,2004年7月から2005年1月までに雨水および露水をイベント毎に採取した.この期間中に雨水を39試料,露水を38試料採取した.また,降水試料と同時に大気エアロゾルおよびVOCsの採取を行った.採取した降水は(1)ろ過しない試料,(2)0.45μmメンブランフィルター(MF)ろ過した試料,(3)0.5μmガラスフィルター(GF)でろ過した試料の3つに分けた.(1)はVOCsおよび表面張力の測定用,(2)はpH,EC,主要無機イオン,溶存有機炭素(DOC)の測定用,(3)はフミン様物質および溶存PAHs測定用に用いた.なお,降水中フミン様物質の定量は河川水中フミン物質のフルボ酸とフミン酸の分別定量に使用されているHiraide et al.(Mikrochimica Acta 113,269-276,1994)の方法に従った. DOC濃度は雨水で0.32-2.46mg/L(n=39),露水で0.90-28.5mg/L(n=38)であり,溶存有機炭素濃度は主要無機イオンおよびpHとともに露水で高かった.一方,現時点では分析試料は少ないが,雨水および露水の全フミン様物質濃度は0.09-0.46mg/L(n=4),0.11-0.83mg/L(n=5)であり,主要無機イオンやDOCと同様に露水中でフミン様物質が高濃度に含まれている傾向にあった.また,変動が大きいものの,フルボ酸の比率は雨(19%)に比べて露(23%)で高い傾向にあった.今後は降水および大気エアロゾル中のフミン様物質の定量を継続して行い,降水中にVOCsやPAHsが濃縮される原因について検討する予定である.また,雨水試料を多量に採取して,降水中フミン様物質を分別精製して光学的性質を調べる予定である.
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