世界の野生イネOryza barthii (Africa原産)、O.Meriodionalis (Australia原産)、O.rufipogone (Asia原産)、並びにAfricaの栽培イネO.gluberrimaのピリミジン二量体光回復酵素の遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定し、UV抵抗性ササニシキ、UV感受性農林1号、それよりも感受性なSurjamkhi (Indica)の推定アミノ酸配列と比較した。その結果、1)大局的に2つのグループに別けられた。O.barthii、O.meradionalis、O.gluberrimaの126、296番目のアミノ酸はそれぞれArg、Gluで、農林1号型であった。一方、O.rufipogoneは、126番目のアミノ酸はArgであるが296番目のアミノ酸はHisであり、サージャンキ型であった。2)O.barthiiの1株、O.gluberrimaの2株ではさらに2ケ所のアミノ酸が変異しており、農林1号の78、282番目のアミノ酸がそれぞれPro、Glyであるのに対し、Ser、Alaであった。O.barthiiの1株では、78、105番目のアミノ酸はPro、あるいはSerであった。また、O.meradionalisは農林1号型であったが、さらに10箇所のアミノ酸が変異していた。3)O.rufipogoneのうち1株の12番目のアミノ酸はValであったがその他のアミノ酸はSurjamkhiと同じであった。このように、世界の野生イネ種のピリミジン二量体光回復酵素の遺伝子には、原産地、種ごとに異なった変異が見られた。とくに、Australia原産のO.Meriodionalisの変異は大きいこと、農林1号型は野生イネに見いだされたが、最も強いUVB抵抗性を示す日本型栽培イネササニシキと同様のアミノ酸配列を有する種は見当たらなかった。
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