研究課題/領域番号 |
16651021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴田 誠一 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (80110708)
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研究分担者 |
沖 雄一 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (40204094)
高宮 幸一 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (70324712)
高田 實彌 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (10115868)
松崎 浩之 東京大学, 原子力研究総合センター, 助教授 (60313194)
静間 清 広島大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10127657)
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キーワード | 原爆 / 熱中性子 / 速中性子 / 加速器質量分析 / Ni-63 / Ni-59 / DS02 / タンデム加速器 |
研究概要 |
放射線が人体に与える影響の評価は、広島および長崎の原爆被爆者の放射線障害の調査によっている。しかしながら、現在に至るまで中性子線の人体に対する評価は、原爆による被爆中性子線量の評価が困難なため未だに信頼度は十分ではない。このことは原子炉および加速器施設のように中性子が放射線防護の対策上主要な線源となる場合には大きな問題である。 原爆による中性子のエネルギースペクトルについては、実験的には熱中性子捕獲反応生成核種を用いて評価されているのみである。しかし爆心から遠方に離れるにつれ、実際上は速中性子による影響が大きくなるため速中性子線量の評価が不可欠である。このような観点から、広島で現在も採取可能な試料で、かつその試料中の測定可能核種として、^<63>Cu(n,p)^<63>Ni反応により銅中に生成される^<63>Ni(半減期:100年)に注目して実験を行った。その実験の過程で銅試料中に、不純物としてニッケルが数10ppm含まれていることがわかった。このニッケルに注目すると熱中性子捕獲反応^<58>Ni(n,γ)^<59>Niにより生成する^<59>Ni(半減期:7.5万年)の測定により、同一試料で速中性子生成核種と熱中性子生成核種の両者を定量することが可能となり、原爆による中性子線量評価に対し新しい方法を提供できることがわかった。^<59>Niはβ線のみの放出核種で半減期が長く、測定が非常に難しいため、これまで全く注目されていなかった核種である。本研究では被爆銅試料中から化学分離により抽出・精製して得られた^<59>Niと^<63>Niを含むニッケル試料について、加速器質量分析法により測定し、その結果から中性子線量評価を行う。従来の測定結果との比較ばかりでなく、計算による原爆中性子線量評価値(DS02)との比較検討も行い、この評価法の有効性について検討する。 現在、広島原爆ドームから採取された銅試料についてニッケルの化学分離を行っており、高化学収率での抽出のため分離法の改良を加えている。分離後ただちに測定に入る予定である。
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