腸内フローラは宿主の健康と密接に関係する。これまで食品添加物を含む種々の化学物質と腸内フローラとの関係は十分に考慮されていたと言い難く、今後このような観点からの検討が必要だと考えられる。本目的に適用可能な従来法では培養操作を必要とし、腸内細菌に嫌気性菌が多いこと、およびすべての菌種を増殖可能な条件がないこと等も考慮すると、培養操作を必要としないで細菌群集の変化を解析する手法の適用が望ましい。以下の項目について検討し、目的にかなう手法を確立するとともに、その妥当性を示した。 1.PCR-DGGE法による腸内細菌群集の解析に関する試料調製法の検討と各種条件の最適化 腸内細菌からDNA抽出、およびPCR用試料調製法を検討し、簡便で夾雑物の影響を排除できる方法を選定した。一連の操作等を条件検討し最適化した。 2腸内細菌群集に影響を与える薬物を用いたPCR-DGGE法適応の妥当性の検討 腸内細菌群集に影響を与えることが明らかな薬物(ペニシリンG、およびメトロニダゾ-ル)をマウスに経口投与し、腸内細菌を回収し項目1で決定した手法でDNAを抽出した。このDNA試料に関して、項目1で決定した条件でPCD-DGGE法を行うことによって腸内細菌群集の解析におけるPCR-DGGE法の解析力を検証し、明瞭なバンドパターンの違いを認めた。 3.主要な菌種の同定 上記項目2で顕著に変化したバンド7種をゲルから回収してDNAの塩基配列から菌種を同定し、変化が予想された菌種のものであることを確認した。 4.化学物質摂取の影響の検討 保存料等繁用される合成食品添加物などをマウスに経口投与し、PCR-DGGE法を行うことによって腸内細菌群集に対する食品添加物の影響を解析した。比較的高用量の投与で変化を認めた化合物を見出したが、実際の摂取量を考慮すると問題となる変化ではないと判断した。
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