研究課題/領域番号 |
16651026
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
伊永 隆史 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30124788)
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研究分担者 |
伊藤 正善 東京都立大学, 理学研究科, 客員教授 (60381448)
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キーワード | 糖鎖 / 多環芳香族炭化水素(PAHs) / コンビナトリアル化学 / 積層型マイクロチップ / キチナーゼ / リゾチーム / 酵素阻害 |
研究概要 |
糖鎖が生物の進化・分類に重要な役割を担ってきたという事実は、糖鎖が環境の影響を受けることを裏付けている。糖鎖構造の変化には酵素が深く関与していることから、本研究では環境化学物質の糖鎖関連酵素に対する影響を解明することを目的とし、環境化学物質が糖鎖関連酵素の作用を阻害することで引き起こされる生体影響を明らかにする方法論を"トキシコグライコミクス"と提唱してこの研究基盤を樹立することを目指した。酵素は、様々な生物において免疫と深く関わっているキチナーゼやリゾチームを用いて環境化学物質による酵素活性の阻害評価実験を行った。最初に、代表的な環境化学物質である多環芳香族炭化水素(PAHs)をこれらの酵素に作用させ、PAHsが酵素活性に影響を与えるのか検討した。その結果、PAHsはリゾチーム活性に影響を与えなかったが、キチナーゼ活性を阻害することを明らかにした。次に、糖加水分解酵素であるアミラーゼに対して既に阻害が明らかになっているフィチン酸に注目した。フィチン酸は、大豆や穀類などに含まれており、私たちが毎日体内に取り入れている物質である。この物質をヒトの免疫システムにおいて重要な役割を果たしているリゾチームに作用させ、リゾチームが酵素活性に影響を与えるのか検討した。その結果、フィチン酸はヒト由来リゾチームを阻害して免疫機構に影響を与える可能性が示唆された。また、この酵素反応系において積層型マイクロチップ上でコンビナトリアル化学の適用を検討するために、単層マイクロチップで酵素反応を行い、バッチ反応との比較を行った。その結果、マイクロチップを用いると酵素反応は早く進行することがわかり、マイクロチップの有用性を確認することができた。これにより、積層型マイクロチップを用いることにより、新規で一斉分析可能な化学物質影響評価手法を確立することが可能となった。
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