研究課題
常温、常圧で木材を摂食しているシロアリの木材分解機構を解明し、模倣できれば、現在、社会的ニーズが高い環境低負荷型の木質系バイオマスの利用法を開発する事ができる。下等シロアリは腸内に木材分解に強く関与している原生動物を共生させているが、これまで原生動物の培養の成功例はほとんどないため、その詳細な木材分解機構は未解明である。本研究では、イエシロアリの腸内に共生する3種類の原生動物の培養とその諸特性の解析を試みた。原生動物の培養条件を種々検討したが、いずれの条件でも3種類の原生動物は3日間で全て死滅した。シロアリ腸内では腸内微生物の代謝産物(酢酸等)が栄養源として腸壁から吸収され腸液中にほとんど残存しない点に着目し、培養に伴い生産される原生動物(あるいは共存している細菌)の代謝産物を吸着剤により除去しながら培養する事を考案した。検討の結果、活性炭を培地に添加して培養したところ、3種類の原生動物のうち、小型のSpirotrichonympha leidyiのみを約40日間にわたり培養する事に成功した。培養液をGC分析した結果、種々の脂肪酸が検出され、(1)S.leidyiが酢酸を生産している事、(2)長鎖脂肪酸やその他の成分が原生動物の生存を阻害している可能性、が示唆された。蛍光染色したセルロースを作製し、培地に添加して原生動物を培養した結果、S.leidyiがセルロースを体内に取り込み、分解している様子が観察された。培養液中のセルラーゼ活性とS.leidyiの数との間には正の相関関係が見られた。これまでS.leidyiはセルロースを利用しないと言われてきた。しかしながら本研究でS.leidyiの培養に初めて成功した事で、S.leidyiがセルロースを体内に取り込み分解する機能を有している事が明らかとなった。本研究により木質系バイオマス前処理法の開発のための基礎的成果が得られた。
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Applied Microbiology and Biotechnology
ページ: DOI10.1007/s253-005-0215-3
平成17年度日本生物工学会大会講演要旨集
ページ: 158