本研究では、一連のポット試験を行うことにより、土壌中の窒素、及びリンの動態に対してミミズが及ぼす影響について解析している。ミミズに関しては、日本で養殖されており、これまでにも実験で用いた経験のあるシマミミズ(Eisenia fetida)を用いた。土壌はOECDで定められた人工土壌(工業砂、カオリン粘土、石英砂、ピートモスの混合物)を用い、半回分式バッチ試験を行った。本年度は、植物を含まない系を用い、土壌中での窒素及びリン化合物の動態に対してミミズが及ぼす影響を明らかにした。まず、第1段階として、系への水の供給を定常状態に設定し、窒素およびリンについてのバックグラウンドを把握した。装置としては、土壌をふるいに詰め、下に受け皿をつけたものを準備した。系全体をアクリルチューブで覆い、湿度を一定に保った。一定量の蒸留水(人工土壌1Lに対し、一日100ml程度を予定)を土壌表面に散布し、同量の水が溶出してくる状態に設定する。実験は光照射型インキュベーター中、一定温度下で行った。ミミズが存在する系としない系で、溶出液中の窒素及びリンの量を比較した。全窒素・全リンの分析はJIS規格の紫外吸光光度法(UV-Vis光光度計は現有)で行い、有機体と無機体といった形態別定量をイオンクロマトグラフィーを用いて行った。さらに、土壌固相各成分中に含まれる窒素量を元素分析装置を用いて分析した。これらの結果、窒素、及びリンを添加しない場合における栄養塩動態が把握でき、ミミズの影響が明らかになった。第2段階では、無機体の窒素、リンの動態を把握するために、前段階で用いた蒸留水の代わりに、硝酸ナトリウム水溶液およびリン酸ナトリウム水溶液を用いた同様の実験を行った。さらに、人工土壌の各成分ごとに懸濁液でのバッチ吸着実験を行い、土壌各成分に吸着された量を明らかにした。
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