研究概要 |
Ca-FeおよびCa-Co合金系にミリングを施すと、単体元素のみをミリングした場合のそれぞれの元素の窒素吸蔵能の和よりも吸蔵能が増加した。また、ミリング時間の増加とともに窒素吸蔵能が向上した。50時間ミリング後、Feの磁化の減少は7%であるが、Ca-Fe混合系にミリングを施すとFeの磁化は32%減少し、Ca-Co系では40.6%減少した。また純Coを50時間ミリングするとhcp相より磁化の大きいfcc相の出現や鉄不純物混入により4%の磁化増加が見られた。混合系における磁化の減少は非平衡合金相の形成を考えないと説明が難しく、x線解析の結果と考えあわせると、ミリングとともに粉末がナノレベルに混合され、アモルファス・ナノ微結晶構造を持ち窒素吸蔵能を持った新しいCa-FeおよびCa-Co非平衡合金相の形成が強く示唆される。磁化の減少はリジッドバンドモデルに基づいた原子モーメント線形dilutionモデルを用いてうまく説明される。 Ca-Co合金系では最大で合金1molあたり0.2molの窒素放出が確認され、これはCa-Fe系の0.5molに比べると小さいが、もとの純元素による窒素の吸蔵能力を考慮すると13倍以上であり、ミリング処理による窒素吸蔵能の向上はCa-Co系合金の方が優れているといえる。最近は新たな窒素吸藏合金としてLi系のミリングも行い、化学真空ポンプの作製などについても活発に研究している。LiとFe, Cu, Alの組み合わせでは、金属間化合物や固溶体が生成すると(Li-Fe系は非固溶であるが過飽和固溶体が生成)、ミリング試料中のLiが窒素と反応する量が減少する。一方、熱力学的に安定で硬い酸化物(MgO、Al203)とLiを組み合わせてミリングを行うと、N2との反応性が高い微細混合物が得られた。NMRの結果よりAl203-Li系ではLiがイオン化しており02とも反応性を示した(空気吸蔵)が、MgO-Li系では金属Liのままであり、02と反応しなかった。またアルミナの結晶相の違いにより結果が異なることから、酸化物の安定度や結晶構造の相違が、原子レベルでLiと微細混合される酸化物の原子結合に影響すると推測される。
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