研究概要 |
本年度は分解対象物質として、ビスフェノールAとフタル酸ジエチルを選び、アセトニトリル溶媒中で、常温常圧の酸素雰囲気下で水銀灯を照射してこれら標準基質の分解量を測定することにより、さまざまな遷移金属触媒の活性を探索している。 触媒としては、まずシクロヘキサンの酸素酸化反応である程度の活性を示した遷移金属塩を使用した。ビスフェノールAの分解ではFeCl_3,Fe_2(SO_4)_3,CeCl_3,CoCl_3などが酸化チタンより優れた活性を示す。しかし、この基質は無触媒の光照射でもかなり分解し、触媒の役割があまりない。ところが、実際の分解処理での水の混入を想定し、溶媒をアセトニトリル/水(4/1)に代えると、殆ど全ての触媒あるいは無触媒での反応性が大きく低下してしまう。唯一の例外はFeCl_3であり、この触媒では逆に反応効率が大幅に向上した。フタル酸ジエチルの分解は全般的にビスフェノールAより緩慢であるが、やはりここでも塩化鉄触媒が例外的に高活性を示すことがわかった。 現在さらに、アルカン酸化で完全分解を促進した尿素、アミド系添加剤の効果や水溶液中での反応活性を調査している。さらにMCM-41やハイドロタルサイトにFe, Co, Mnを担持した固体触媒、あるいは光吸収を促進するための色素の利用を計画し、例えばローズベンガルのカルボン酸部位にさまざまな金属をつけた光触媒を調整している。ハイドロタルサイト、[Mg_3Al(OH)_8]1/2CO_3^-のmgの一部をFeに置き換えた固体触媒についてはすでに合成に成功し、600nm付近までの可視光吸収を有し、触媒活性を示すことを確認している。
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