本研究の目的は、低環境負荷材料である含水冷却固化させた竹繊維(竹-氷複合系)をガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の代替材料として極低温超電導機器の電気絶縁システムに適用する可能性を検討することにある。従来から、超電導電力機器に必要とされる極低温領域の電気絶縁材料としてはもっぱらGFRPが使われてきた。しかし、GFRPは廃棄の際に環境に与える負荷が大きいことが問題視されている。これに対して、竹と氷で構成した竹-氷複合系は廃棄の際に環境に与える負荷は著しく小さい。竹材は、構造上水分を吸収するために、竹材に水分を含浸させた後、極低温冷媒中(液体窒素)に含浸し竹-氷複合絶縁系を形成させることを考えた。この複合系を試料として絶縁破壊特性を観測し、極低温領域における新しい複合材料の電気絶縁構成の可能性を評価した。 本年度は、マダケとモウソウチクを使用した竹-氷複合系の交流絶縁破壊特性に及ぼす電圧印加方向の影響について実験・検討を行った。電圧印加方向は、繊維に平行な繊維方向、繊維に垂直な円周方向および半径方向の三種類とした。絶縁破壊の強さは、繊維方向、円周方向、半径方向の順に高くなった。ただしモウソウチク-氷複合系の交流絶縁破壊の強さは、繊維方向において、ばらつきが大きく、特に最小値は未含水のものと近い値となった。繊維方向では、竹の構造および水の浸入状態が絶縁破壊特性に及ぼす影響が大きいものと考えられる。他の電圧印加方向においては、モウソウチクとマダケ共にほぼ同様の特性を示し、約40kV/mmの値であった。GFRP積層板の絶縁破壊の強さが5〜40kV/mmであることから、絶縁破壊の強さだけを比較した場合、竹-氷複合系はGFRPの代替材料として有望であり、低環境負荷材料としての可能性を示すものとなった。 現在、竹-氷複合系よりもさらに工業的用途に適用可能とするためと竹の構造による影響を小さくするために、竹をパルプ化し、竹パルプ-氷複合系の交流絶縁破壊特性についての実験・検討を行っている。
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