平成16年度は、環境浄化用吸着材の母材としてキトサンと綿に着目し、主に2項目(下記)について検討した。研究成果としては、綿繊維をマイクロ波加熱し炭素繊維とする製法が、有機色素の吸着能に優れた吸着剤を得るのに有効であること(2項に記載)を見出した。 1.ホウ素吸着材の検討と評価:JISで規定される方法を参考にした。具体的には、10ppmのホウ酸水溶液を100mlずつ吸着剤層(24cm^3)に通過させてホウ素の吸着性を測定した。吸着母材の候補としては、粉末状キトサン、綿花由来の活性炭素繊維、代表的なホウ素吸着材である陰イオン交換樹脂(アンバーライト)である。結果的に、キトサン粉末ではホウ素が吸着するが、陰イオン樹脂に対して、ホウ素交換能で60分の1、処理速度で10分の1、吸着持続性で6分の1以下であった。現時点ではホウ素吸着材として陰イオン交換樹脂を上回ることができず、充填量を増やすなどの物理的な対処法を試みたが、これもあまり有効でなかったことから、キトサン自体を化学修飾して吸着能を高めるなどの方策が必要である。 2.綿由来活性炭素繊維の製造に対するマイクロ波過熱の効果検討:JISで規定されているメチレンブルー法により、有機色素の吸着能を評価した。この結果、非酸化的雰囲気下でマイクロ波照射して得られた活性炭素繊維が、高いメチレンブルー吸着能を示した。電気炉加熱による方法との比較では、色素吸着能力、過熱処理時間(短縮)の二点で特に優れている。マイクロ波加熱装置は、市販電子レンジとマイクロ波を吸収する筐体を組み合わせて改造したものであるが、平成17年度では、マイクロ波印加条件と活性繊維の吸着性能の関係を検討し、マイクロ波加熱の優位性を明らかにするとともに、有機色素以外の物質に対する吸着能も調べる計画である。
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