研究概要 |
ポリ塩化ビニル(PVC)が不活性ガス雰囲気下で炭素化する過程で液状化する性質を利用して,PVCとテンプレートとしての多孔質アノード酸化アルミナを熱処理することにより,カーボンナノファイバーを作製した。そのナノフィラメントの熱処理温度による構造変化について調べた。テンプレートとして,ポア径30〜40nmのポーラスアルミナを用いたところ,600℃で得られたカーボンナノファイバーでは,あまり結晶構造の発達は見られなかったが,高分解能TEM観察から,ファイバーの長軸方向に直交する層構造ができつつある様子が認められた。1000℃以上の熱処理では,明らかにファイバー軸に直交する方向に炭素網面が積層したPlatelet構造のナノカーボン材料が生成した。この層構造は熱処理温度と共に発達し,2800℃で熱処理すると,エッジにおいて,グラフェンシート4層程度がループを形成していた。これは,炭素のエッジが表面に露出した状態は熱力学的に不安定なために,生じたものと考えられる。一方,100nm程度の球状ポアが数珠状に繋がったアルミニウム交流エッチング箔をテンプレートに用いると,層構造が炭素表面に沿って発達したナノカーボン材料が得られた。したがって,炭素の配向性はテンプレートの材質に依存することがわかった。 さらに,テンプレートして,500nm角の四角いトンネルピットを持つアルミニウムエッチング箔を硫酸もしくはシュウ酸溶液中でアノード酸化したものを用いることで,試験管ブラシ状のナノカーボン材料が得られることがわかった。これは,中心の500nmの径の棒状炭素から無数の直径20nm程度の髭状炭素が伸びた形状をしている。この髭状炭素も長軸方向にグラフェンシートが積層したplatelet構造をしていることが確認された。
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