研究課題
本年度は、(1)ラットに抗生物質ゲンタマイシン(GM)を投与することによる実験腎炎発症モデルを用いて、疾患特異蛋白質を解析した。その結果、分子シャペロンHSP70が本モデル動物において特異的に変動した。(2)GM特異結合蛋白質が分子シャペロンHSP70であり、カルボキシ末端側のペプチド結合領域であることを報告した。(3)GM投与ラット腎臓は、副作用としての腎毒性と比例してライソソームが腫大し、腫大したライソソーム内にGMとHSP70の共局在が確認できた。この結果から、腎不全を誘発する細胞内因子として、分子シャペロンHSP70のシャペロン活性抑制が疾患特異マーカーとしての候補と考えられる。さらに、ラット肝臓を用いた虚血再環流実験を行った。このモデルにメチルプレドニゾロンを投与すると、分子シャペロンHSP60の合成が特異的に誘導され、その後ミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア膜電位低下を抑制すると共に、虚血時におけるミトコンドリアの機能を保護することが示唆された。この結果は、肝臓の虚血マーカーとしてHSP60の変動も疾患特異マーカーと考えられる。この様に、モデル動物を用いた疾患特異マーカーは、ある程度解析できたものと考えられる。HSP70やHSP60に対する特異抗体を得ているため、抗血清からIgGを精製し、金コロイド表面に抗HSP70 IgGやHSP60 IgGを固定化し、HSP70やHSP60との交叉反応性を、表面プラズモン解析や周波数変動装置を用いた解析法を検討している。蛋白質を固定するための支持体の選択、及び検出方法の検討も含め、次年度は、疾患特異マーカーの微量検出方法を確立する予定である。
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Journal of Biological Chemistry 279
ページ: 17295-17300
Shock 22
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