研究課題/領域番号 |
16651059
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
臼井 博明 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 助教授 (60176667)
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研究分担者 |
田中 邦明 東京農工大学, 大学院工学府, 教務職員 (30251581)
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キーワード | 蒸着重合 / ポリペプチド / 自己組織化 / 高分子薄膜 / 表面プラズモン / アミノチオール |
研究概要 |
ポリペプチドは生体機能を持つのみならず、環境によってコンフォーメーションが変化すること、分子鎖中に強い双極子モーメントを持つことなどの特徴を持ち、機能材料として有用である。そこでその薄膜化が重要な課題となるが、従来の溶液法では不純物などの影響で十分に分子量の大きな重合膜を形成することは容易でなかった。そこで物理蒸着法によってポリペプチド薄膜を形成するための手法を開拓し、表面プラズモンを用いて膜成長過程のその場観察を行った。ポリペプチド薄膜は、末端にアミノ基を持つ単分子(SAM)膜を基板表面に形成し、その表面にアミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)を蒸着することによって形成した。SAM材料としてはアミノエタンチオール(AET)及びアミノベンジルチオール(ABT)で比較を行い、NCA材料としてはベンジルアスパレートNCAを用いた。その結果、通常の蒸着ではNCAが基板表面にそのまま付着して低分子膜を形成するが、SAM膜表面に蒸着することによって真空中の基板表面で重合反応が進行してポリペプチド膜が得られることが示された。さらに通常のNCA蒸着膜は蒸着直後から再蒸発が進行して膜が消失するが、SAM膜表面にポリペプチド膜を形成することで再蒸発が抑制できることが示された。次にこのような製膜機構の差を薄膜成長様式の制御に応用した。有機蒸着膜は多くの場合島状に三次元成長するために表面平坦性が損なわれる。そこでAET及びABT表面のNCA製膜過程を表面プラズモン観察した。その結果ABT表面の蒸着膜は光学損失が少ないことが見出された。また原子間力顕微鏡観察では、AET表面に比較してABT表面では平坦性に優れた薄膜が成長することが見出された。これらの結果から、基板表面に最適な化学修飾を施すことによって、重合反応を促進できるのみならず、平坦性に優れた膜成長を実現できるものと考えられる。
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