平成15年度から、検討していたマイクロバイオエンジニアリングシステム(MBES)が順調に稼動しはじめ、予備的なデータが出始めている。このMBESは、酢酸菌の培養を従来のようにマイヤーなどの中でバッチで行うのではなく、連続的に、高効率でバクテリアセルロースを生産できる。このシステムをナノハイブリッド化に利用するため、まず菌体を活性化したのち、リン酸媛衝液で置換する条件、置換後4℃における保存時間の再活性化に対する影響、さらにリン酸緩衝液の凍結保存の影響などを明らかにした。 一方、ナノハイブリッド化を系統的に行うため、まず、バクテリアセルロースの階層構造形成の基本構造単位であるサブエレメンタリーフィブリル(SEF)を蛍光増白剤を用いた培養を行うことにより、単離して、その構造を固体^<13>C NMR法により精密に解析した。その結果、SEFの各分子鎖のCH_2OH側鎖は、天然セルロース結晶のようにtrans-gauche(t-g)コンホメーションを取らず、g-tおよびg-g間で速い交換を行っていること、したがってO6-O5間の分子内水素結合は形成されておらず、液晶のような状態にあることを明らかにした。この結果に基づき、SEFの凝集により、O6-O5間の分子間水素結合と側鎖のt-gコンホメーションの形成により結晶核が生成すること、また分子鎖軸に沿った多重核の生成とその成長により、天然セルロースでも結晶-非晶からなる繰り返し構造が生成することを指摘した。今後は、このような階層構造を利用したナノハイブリッド化をMBESを利用して検討する。
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