研究課題/領域番号 |
16651067
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増原 宏 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60029551)
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研究分担者 |
開 祐司 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40144498)
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キーワード | フェムト秒レーザー / レーザー誘起衝撃波 / 動物細胞 / 単一細胞操作 / マイクロマニピュレーション / 細胞外マトリックス / キャビテーションバブル |
研究概要 |
本研究は、フェムト秒レーザー誘起衝撃波が細胞に与える影響を明らかにし、そのバイオ技術への応用の可能性を示すことを目的として進められた。まず、高強度フェムト秒フェムト秒レーザーを培養液に集光照射し、そこで誘起される諸現象を、高速度カメラにより撮影した。その結果、培養液にフェムト秒レーザーを集光したときに細胞に力学的な影響を及ぼす現象は、衝撃波のみでなく、衝撃波に付随して発生するキャビテーションバブルであることが明らかになった。これらの現象により溶液には伝搬波が発生し、細胞やそれと同程度の大きさの生体材料が、数100μs以下の時間で動かされることが分かった。次に、フェムト秒レーザー衝撃波がもたらす細胞の破壊とその後の修復挙動を明らかにするために、集光フェムト秒レーザーにより細胞内の一部分に損傷を与え、そこで引き起こされる細胞の瞬間的な破壊や移動の様子を高速カメラにより調べた。その結果、細胞内の細胞骨格の一部が破壊された場合でも、その破損が数100μs以下の時間で細胞全体に拡大することが明らかになった。さらに、細胞骨格を形成する細胞内のアクチンタンパク質を緑色蛍光タンパク質により染色し、基板と細胞の界面でのアクチンフィラメントの生成・消滅挙動を全反射蛍光顕微鏡により調べ、切断されたアクチンフィラメントが数十秒以内に収縮し、その後数時間以内に修復されることが示された。これらはフェムト秒レーザーを細胞に集光照射した場合でも、細胞全体の活性が大きく乱されることが無いことを示す結果であり、フェムト秒レーザー誘起衝撃波、およびそれに追随して発生する諸現象が、細胞を操作するための新しいバイオ技術となり得る可能性を示す結果であった。
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