研究概要 |
平成18年度においては、水素結合連鎖間の配列様式が制御可能なニトロニルニトロキシドラジカル誘導体の合成し、結晶構造とバルク磁性の相関を構成分子の環電流効果と関連づけながら研究目的とした。具体的には、分岐水素結合により集積したナノ棒磁石どうしの配列様式を合成化学的に制御するために、ベンゾイミダゾールまたはインドールのベンゾ環部分を部分的に窒素原子に置換した誘導体および5-位または6-位にハロゲン原子(Cl、Br)を導入した誘導体を合成した。 結晶構造解析の結果、これら誘導体は、母体と同様の積層カラム構造を形成した。SQUID磁気測定の結果、ラジカル分子間に強磁性的な相互作用。Cl、Br体では、6位に導入されていた。Cl、Br体では、ハロゲン原子を介して積層カラム間に弱い反強磁性的相互作用が観測された。 さらに、対応する6-ハロインドール誘導体では、特定のカラム間でより強い反強磁性的相互作用が優勢となり、Cl体は,1.9K、Br体は、2.1K付近でメタ磁性転移が観測された。これは、これまでの純有機メタ磁性体と比較して1桁高い温度である。 また、窒素原子を置換したイミダゾ[c]ピリジン骨格を導入した誘導体では、1K付近で比較的大きな保磁力を有するバルク強磁性体に転移した。既知のニトロニルニトロキシラジカル誘導体に比べ転移温度は高く、保磁力も大きい。複素環部位の環電流効果または、カラム環の交換相互作用がスピン整列に大きく寄与していることが示唆された。計算化学的手法を用いて詳細なスピン整列メカニズムの解明を進めている。 以上より、ベンゾイミダゾール環およびインドール環を系統的に化学修飾し、2次元的なメタ磁性体大きな保磁力を有するバルク強磁性体の結晶を見出すことに成功した。
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