研究課題/領域番号 |
16651072
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
夛田 博一 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 助教授 (40216974)
|
研究分担者 |
山田 亮 分子科学研究所, 分子スケールサイエンスセンター, 助手 (20343741)
|
キーワード | 有機超薄膜 / 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光 / 局所状態密度 / スピン偏極 / トンネル電流 / 表面磁性 / エピタキシャル成長 |
研究概要 |
本研究では、表面の電子状態を原子分解能で観察できるSTMの探針として磁性材料を使用し、高いスピン偏極率トンネル電子で表面スピン状態を観察する高スピン偏極STM(Spin Polarized STM:SPSTM)を開発し。これを用いて表面上に吸着させた有機分子の持つスピンを原子レベルで計測することを目的とする。本年度は、中心金属にコバルトを有するコバルトフタロシアニン(CoPc)を対象分子とし、金および銅表面に分子を少量蒸着し、個々の分子の電子状態を微分コンダクタンス(dI/dV)測定より明らかにした。まず、金(111)面上では、CoPc分子は、規則正しく配列したエピタキシャル多層膜を形成した。2層目・3層目の分子は内部構造まで明瞭に観察されたのに対し、1層目の分子は、輪郭のみが確認され、分子-基板の相互作用が大きいことが示唆された。1層目の分子のdI/dV測定より、分子の最高占有軌道(HOMO)および最低非占有軌道(LUMO)に相当するピークが確認された。一方、銅(100)表面の分子のdI/dVスペクトルでは、HOMOおよびLUMOに対応するピークの他に、HOMO-LUMOギャップ内にピークが確認された。dI/dVの分子上マッピングおよび密度汎関数を用いた分子軌道計算により、このピークは吸着により、分子のLUMOと銅表面の軌道が混成して生じた新たな電子状態であることがわかった。安定なdI/dV測定が可能となったことにより、探針に磁性材料を用い、スピンに関する情報を取り出すことを目指す。
|