本研究は光と分子の相互作用により分子間力を制御し、ナノ機械の駆動方法の基礎を探索しようとするものである。本年度は、極性有機半導体Alq3をレーザーで光励起しながら蒸着するとレーザーの偏光方向に一軸配向しながらエピタキシャル成長することを見出した。これは、強誘電体で知られている異常光起電力による巨大電場(〜MV/m)により、偏光方向にエピタキシャル成長したドメインに双極子モーメントを持つAlq3分子がひきつけられてさらに配向し大きくなることが理由であると考えられる。光励起による巨大な電場の発生は、光エネルギーをナノ機械の駆動に用いたり光触媒反応に利用したりする応用が考えられる。強誘電体の異常光起電力の機構はまだ完全にはわかっていないようである。この点に関してもAlq3分子の基底状態・励起状態の電子状態を第一原理計算をもちいて計算することなどにより、機構の解明に寄与したい。さらに、液晶分子12CBのエピタキシャル成長中に電場をかけることにより結晶形態を変化させることができることを見出し、配向が起こる温度と電場の関係を定量的に明らかにした。また、液中AFMの探針と基板表面に異なる分子を結合させ、電荷移動錯体や金属錯体を形成させてフォースカーブを測定し、さらにこれらを光励起することによるフォースカーブの変化を測定する実験も準備している。現在、再現性よくフォースカーブを液中で測定するため、Qの高い共振器である針状の水晶振動子を用いて振動の位相変化による力検出を行うための装置を設計・製作している。
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