体内を自在に移動して治療を行う医療マイクロマシンは、マイクロマシン技術の中で最も切望されている課題の1つである。本研究では、ATPにより駆動する生体分子モーターを融合させたバイオマイクロ・ナノマシンの開発を目指した。このようなバイオマイクロマシンを構築するには、生体適合性の高い材料で構成されたマイクロ可動機構が不可欠である。我々の提案するバイオマイクロマシンは、独自開発の2光子マイクロ光造形法を用いて作製したマイクロ可動機構を基本部品とする。そこで、2光子マイクロ光造形法に使用可能でかつ、生体適合性の高い材料を探索した。その結果、コラーゲンなどの生体高分子と、生体適合性の高いシリコーン樹脂を見いだした。しかしながら、生体高分子は元来生体由来であるので生体適合性は非常に高いが、機械部品として利用するには剛性が不足していた。そこで、本年度は、マイクロマシンの構成材料としてシリコーン樹脂を用いて、独自開発の2光子マイクロ光造形法によって可動部品を作製することを試みた。実験では、シリコーン樹脂に光開始材を混合し、独自の樹脂材料を調合した。この材料を用いて、直径10マイクロメートルのシリコーン樹脂製マイクロローターを高精度に試作することに成功した。また、マイクロローターを光トラッピングによって回転駆動させることにも成功した。光トラッピングの発生力は、数ピコニュートンオーダーであることから、DNAの伸縮運動によっても十分駆動可能であると考える。今後は、DNAと可動部品の接合方法を確立し、DNAをアクチュエータとする新しいバイオマイクロマシンの構築を目指したい。
|