本研究では、ゲーミング技法を活用して、阪神・淡路大震災の被災者、自治体職員の災害対応体験・教訓を、今後予想される都市型大規模災害に対する社会的防災力の向上に資する<教訓データベース>として整理し、クロスメディア型のデータベースを関連づけた防災教育・学習ツールを開発した。 具体的には、第1に、阪神・淡路大震災の被災者、および、自治体職員による災害対応体験・教訓を記録した資料として、被災者による語り部グループにおけるオーラル資料、自治体職員を対象としたインタビュー調査で蓄積されたオーラル資料をとりあげ、エスノグラフィーの手法により災害対応エピソードを抽出した。 第2に、これらを、災害対応の種別、分野、時期、場所等をキーに整理体系化し、防災実践をステークホルダー間のジレンマ事態として定式化し、<教訓データベース>を構築した。 第3に、<教訓データベース>をもとにゲーミング形式の防災知識・技法の教育・学習ツール(「クロスロード」)を開発した。「クロスロード」は、自治体職員用(神戸編)、地域住民用(市民編)、災害時要援護者の対策用(要援護者編)など複数バージョンを開発し、目的・用途に応じて使い分けることが出来るよう配慮した。 最後に、こうした教育・学習ツールの利用者に、さらに発展的な知識を習得せしめるための支援ツールとしてクロスメディア型のデータベースを位置づけ、その利活用を図った。すなわち、データベース上の情報を、時間・空間・内容等により検索可能とし、ゲーミングを通したローカルな問題解決活動の成果を普遍的な知識へと接続するためのツールとして、クロスメディア型のデータベースを位置づけた。
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