研究概要 |
開発途上国において地震被害想定のあり方を考える場合、日本で行われているような精度が高くかつきめ細かい地震被害想定は必ずしも必要ではなく、まずは被害想定を実施するためのコストを考慮し、ある程度の精度を確保した被害想定を早期に策定し,どの地域の何に重点的に限られた防災資源を投入するかを考えることが必要である。 このような観点から、平成16年度は横須賀市をモデル地区として選び、この研究グループが提案したディジタル標高データ(DEM)を用いる地形分類手法に基づき、スペースシャトル飛行で得られた合成開口レーダー(SAR)画像をDEMに加工したものであるSRTM-3 (Shuttle Radar Topography Mission,地球の両極を除く約80%、全人口密集地の約95%をカバーしている)を用いて、地形分類を行なった。その結果、既存のデータである500mメッシュの地形分類や土地条件図と比べて、平坦化された地形が台地として分類されるなど改善の余地はあるものの、谷筋がよく表現されるなど、空間的に詳細な分類結果を得ることができることが分かった。 また、分類された結果を用いて松岡・翠川の方法に基づき地形区分ごとの地盤増幅度を推定し、既存のデータによる増幅度と比較した結果、空間的に殆ど同じ傾向を示すことを確認した。 しかし、限られた地域でのケーススタディーだったため、平成17年度はフィリピンのマニラを中心にこの研究グループが提案した手法を適用した結果、地震被害想定のための基盤データが殆ど整備されていない国・地域においても適用可能であることを確認した。 今後はより多くの国・地域におけるケーススタディーを通じ、本研究で提案した手法の有用性を確かめていく予定である。
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